算数(または数学)ーこの分かり合えないもの

私は純粋な文系だ。小さい頃から算数は出来る方でなかった。100マス計算は泣きながらやっていたし、九九をみんなの前で言うテストの前は倒れそうになっていた。でも、だからって算数は嫌いじゃなかった。答えが一つで分かりやすいし、その答えに行き着いた時の爽快感は他の教科にはないものだった。解法は暗記とはいえそれを組み合わせたり最適な解き方を考えるのは面白かった。得意ではなかったがその頃はまだ流れに残されない程度にはギリギリついていけてはいた。悲しいかなサトウの一方的な片想いだったが算数との関係はそう悪くなかった。
 小学5年生、私は風邪をこじらせて肺炎になり、ひと月近く学校に行けたりいけなかったりを繰り返した。そして完全に回復して登校した初日。欠席中にあったテストを1人で受けるよう言われてめくってみると、謎の図形とその面積を求めるよう書いてあった。わーお。わからん。咳と熱に苦しみ抜いた末のサトウを迎えてくれたのは四角の歪んだのみたいなそれだった。台形。私が家でけほけほ咳をしたりうつらうつらしたりしている間に、同級生は上の辺と下の辺の長さの違う奇妙な形の面積を求められるようになっていた。置いてけぼり。サトウはプライドが高かったが、努力家ではなかったから授業中は教科書の解き方をそのまま写すことでその場をしのいでいた。
......で、今もって出来ないんだよ。というストーリーが自分の中であって、だから自分のせいじゃないというニュアンスを含ませて話したら、彼氏にそれはただセンスが無かっただけの話だよ、と言われてしまった。薄々そうじゃないかと思ってはいたけれど、やっぱり?国語は小さい頃に本読んでれば出来るし、社会科は暗記だし、英語も単語は暗記であとは国語と一緒だし、そう考えると文系の入試ってアホでも出来ると思ってるから、数学は運悪くできない境遇に育ったっていうストーリーを後付けしてみたんだけど、やっぱりダメ?やっぱりバカなだけ?やっぱり勉強のセンスが無いだけ?......そうっぽい。
  国語は物心ついた頃から得意だったし、文系科目に関して本気で努力した、って言える時はない。三科目受験のうち1科目が得意だと、ほとんど努力するとこなんてない。それでまあ満足なくらいの大学に入れちゃったものだから、引け目もある。だから理系には憧れてるし恐怖心まで持ち続けて、今にいたるのだ。
 理系・文系で分けるなんてナンセンスだけど、けど、理系、羨ましい。かっこいい。なれなくて悲しいよ。数学に釣り合う女になれなかった。